目を覚ましたら

3月27日に2nd EP『目を覚ましたら』をKAOMOZIからリリースしました。

 

 

EP全体の世界観

僕は「水槽脳仮説」(この世は水槽の中に浮かんだ脳が見ている夢かもしれない という仮説です)を本気で信じていて、「死=永遠の眠り」のような表現や思想には疑問を抱いています。

本当は「死=現実に向かう(目を覚ます)こと」で、この世界は全て夢だとしたら?

目を覚まして向かった場所でもう一度死んだら(目を覚ましたら)、次に行く場所は再び現実だろうか?輪廻転生は本当に永遠か?

夢=現実だろうか?

そう思いながら、目を覚ました時に今いる世界のことを思い出せるように、楽曲を制作しました。夢日記のようなものです。

ちなみに前作『めたふぃくしょん(-_-)zzz』は「アニメのキャラクターが現実に現れたらどうなるのか」という世界観によって制作されたのですが、そのアニメの主人公(渦波水沫)は物語内で長い夢を見ているという裏設定があります。『virtual image』は彼女が登場するアニメ(架空)のオープニング曲として作りました。

 

1. Another Room

夢から現実に向かう途中にある部屋で鳴っている音 というイメージです。この夢は「世界」のことでも、まっすぐに「眠っている時に見るもの」のことでもあります。

今作は終盤に近付くにつれ音が爽やかになっていくことを意識して作ったので、この曲はかなり重めというか、のしかかってくる感じがします。かといって気持ち悪さや不気味さ全開でもなく、どこか浮遊感のある音になるようこだわりました。これは今気付いたのですが、「寝起きの怠さ」に近いですね。

なんとなく水の中みたいな雰囲気もするのは水槽のイメージに影響されているからです。

 

2. 安全のために

自分の内面にある破壊衝動やネガティブな感情と、目指している「輝き」のギャップについての曲です。夕方と夜の境目になると部屋が青色というか灰色っぽくなり、それがなんだか変なので、その感覚の曲でもあります。

初期の佐々木虚像楽曲あるある「1曲が短く、アウトロで暴れる」を意識し、当時よく使っていた音を使用しました。アウトロの左側で鳴っている声は逆再生したつくよみちゃんの声を切り貼りして架空の言語っぽくしたものです。

ここから『揺蕩う信号』までは歌詞が強く繋がっている気がします。タイトルは延長コードに書いてあった文章から「これ良いかも」と思ってとりました。

 

3. collapse

元は去年作ったインスト曲でした。こういう音は別名義で……と思っていたのですが、思い切って佐々木虚像としてリリースしました。

眠れないまま外が明るくなってきた時の感じとか、原因不明の焦燥感とか、そういう苦手で嫌なものを僕は「負の光」と呼んでいるのですが、それについての曲です。

僕の祈りが届かないこと 気付いたから
電波に触れて さよなら言えなかった
河川敷 嫌な感じする場所を見てただけ
電池切れ 運命を分かってるふりしていて

これは美しい存在に近付くたびに自分の刺刺しさや歪さに気付いてしまうから、どんなに好きでも離れたところから見ていたい という個人的な感情です。普段は自分から少し離れた視点で歌詞を書くことが多いので、こういう歌詞を書くのは初めてだと思います。

河川敷はただ、ずっといるとなぜか異世界に吸い込まれそうな気持ちになって、それが嫌であると同時にすごく好きなので歌詞に入れました。

 

4. 揺蕩う信号

元は2022年に発表した楽曲ですが、色々と納得できていない部分がありSoundCloudから削除したので、今回リメイクしてみました。最初に流れる音も『syzygy』という僕の楽曲(こちらも削除済み)から持ってきたものなので、過去曲のキメラみたいになっています。光を探すための曲です。

collapseの個人的な感情に、輪廻転生に対する見解を重ねた結果「多分 君に見つけてほしかったんだ」という言葉に辿り着きました。

歌詞に登場する「近所の子供」は前世で自分の友人だったかもしれない という裏設定があります。

 

元の『揺蕩う信号』の歌詞

瞬きで教える雨降り 壊れた言葉を吐き出して

魔法より脆くて歪んだ 夢と熱の気配


それは夕方の空と同じで 私の記憶に触れるみたい

呪いじゃないんだよ だから気付いてよ


目眩によく似た私に

 

5. 幽霊

もし「生まれてきた意味」「生きる意味」の答えが「魂があるだけ」で、それを繰り返すことが全て だとしたら辛すぎるし、生まれ変わる意味も何も無くなってしまう気がします。

ただ、無理矢理で良いからと何か人生に意味を見出すのもなかなか辛いもので、それなら自分の魂が「ここにある」ということをゆっくりと認めて生きていくだけでも良いのではないか……という曲です。

タイトルと「生きていくこと」についての歌詞は表面的には正反対に思えますが、幽霊もかつては生きていたし、「現在、生きている側」が特別視しているだけで特に僕たちと違いは無いのではないか?という意味でもあります。

心地良く韻を踏めた気がするので、そこにも注目してみてください。

 

6. 目を覚ましたら

「死んだら魂はどこへ行くか」みたいな輪廻転生の曲で、それについては前述したように「死=目を覚ます」と思っています。

君が読んでいた漫画は
まるで人生みたいな終わり方をした
思い出になれなかった日々を集めたら
いつか笑えるようになるのかな

「漫画やアニメが打ち切りになるのって、人生に似ている」と思い、上記の文章をメモに書いたところから歌詞ができました。命をしっかり最終回まで持っていくのはクレーンゲームくらい難しいし運任せで、それに気付かないまま一生かけてクイズを解いていくのが「人生」かもしれません。

夕方のチャイムが鳴った これが合図か

これは生活リズムが狂い、外から聞こえた夕方のチャイムで起床し「終わった」と同時に「人生面白くなってきたぞ」と思った日が元ネタで、collapseでは朝に眠っているので、今考えると歌詞が少しだけ繋がっています。

ちなみに「死は青い光を放つ」という話があるので、詳しいことは検索してみてください。

 

7. 壊れた空を見ています

目を覚ましてたどり着いた場所の音 というイメージです。

この事は『virtual image』の歌詞でも触れていますが、10年くらい前に見た「緑色の空が見える河川敷で横たわる」という夢が忘れられず、「夢=現実かもしれない」と考えてみると、どうしても現実の空は青色じゃない気がしてしまいます。

 

何か勘違いされそうなので明言しておきますが、今作は、ただの「本当は向こう側が現実だったら、どうする?」みたいな空想です。